土地信託契約書
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この書式は、土地信託契約書のひな形です。
書式の一部抜粋(本文)
土地信託契約書
甲○○○○(以下「委託者」という。)と乙○○○○(以下「受託者」という。)は、委託者と受託者が締結した令和○年○月○日付「基本協定書」に基づき、次の条項からなる不動産信託契約を締結した。
(信託の目的)
第1条 委託者は、末尾記載?の土地(以下「本件土地」という。)の上に末尾記載?の内容の建物(以下「本件建物」という。)を信託財産として建築し本件土地及び本件建物(本件土地及び本件建物を総称して、「信託不動産」という。)を管理・運用することを目的として、本件土地を受託者に信託し、受託者はこれを引き受けた。
(信託の公示)
第2条 委託者及び受託者は、本件土地について本件契約締結後直ちに信託による所有権移転の登記及び信託の登記を行うものとし、その費用は委託者が負担する。
(建物の建築)
第3条 受託者は、本件建物を、受託者が相当と認める建設会社(以下「本件建設会社」という。)に請け負わせて建築する。
2 受託者は、本件建設会社と締結する建築工事請負契約に関し、請負代金の額及び支払方法、工期その他主な事項についてあらかじめ委託者と協議する。
(必要資金の借入及び担保提供)
第4条 受託者は、建物の建築に必要な資金を、信託財産及び受益者の負担において借り入れることができる。この場合、借入には他の信託財産の受託者としての乙からの借入を含むものとする。
2 受託者は、前項の借入金の担保として、信託財産である本件土地及び完成後の建物に抵当権又は根抵当権を設定できるものとする。
3 前2項の規定は、第1条記載の信託目的達成のため受託者が信託事務処理に必要な資金を別途借り入れる場合、並びに信託不動産の賃貸により受託者が入居保証金等(名称の如何を問わず入居保証金と性質を同じくするものを含む。以下同じ)を受け入れる場合に準用する。
(建築工事の設計・監理)
第5条 受託者は、受託者が相当と認める設計・管理者に、建築工事を設計・監理させることができる。
(契約不適合責任等)
第6条 委託者は、信託期間中又は信託終了後、その信託した土地の瑕疵及び瑕疵があることを原因として生じた損害等につき、その責めを負う。
2 受託者は、信託期間中又は信託終了後、信託不動産につき発見された瑕疵及び瑕疵があることを原因として委託者又は受益者に生じた損害等につき、善良なる管理者の注意をもって管理した限り、その責めを負わない。
(建物の引渡し、信託の公示)
第7条 受託者は、建物完成後遅滞なく本件建設会社より信託財産である建物の引渡しを受け、受託者が必要と認めたときは、所有権保存の登記・信託の登記を行う。
(信託不動産の管理・運用方法)
第8条 受託者は、次の方法により信託不動産を管理・運用するものとする。
一 本件土地は、建物の建築及び所有のための敷地として管理するほか、受託者が相当と認めたときはその全部又は一部を駐車場その他の目的で賃貸又は無償使用させることができる。賃貸料その他の条件については受託者が定める。
二 本件建物の全部又は一部を受託者が相当と認めるものに賃貸する。
賃貸料その他の賃貸条件については、受託者が定める。
三 受託者は、信託不動産につき、受託者が相当と認める方法・時期及び範囲において修繕・保存又は改良を行う。
四 受託者は、本件建物につき、受託者が相当と認める損害保険を附する。受託者は、借入金その他の債務の担保として、保険金請求権に質権又は根抵当権を設定することができるものとする。
五 受託者は、信託不動産の修繕・保存又は改良等の管理事務を、受託者の選任する第三者に委託できる。
六 受託者又は前項の管理事務の受任者が、管理事務を遂行するため必要があるときは、信託不動産の一部を無償使用することができる。
(受託者の善管注意義務)
第9条 受託者は、建物の建築工事・信託不動産の管理・運用その他信託事務について善良なる管理者の注意をもって処理する限り、委託者又は受益者に損害が生じてもその責を負わない。
2 受託者は、受託者の責に帰すべき事由による場合を除き、事由の如何を問わず、信託財産について生じた価格の下落その他の損害について責を負わない。
(訴訟義務の免除)
第10条 受託者は、受益者から申し出があり、これを承諾した場合のほかは、信託財産に関し、訴訟手続をなす義務を負わない。訴訟手続については、受託者は適当と認める弁護士を選定し、これに一切の事項を委任する。
(信託の元本)
第11条 本契約においては、信託不動産、信託不動産に関して取得した補償金その他信託不動産の代償として取得した財産並びに第4条の借入金債務及び信託不動産の賃貸に関して受け入れた敷金・入居保証金等の返還債務、その他これらの資産及び債務に準じるものは原本とする。
(信託の収益)
第12条 本契約においては、信託不動産より生ずる賃貸料、信託財産に属する金銭の運用により生ずる利益、その他これらに準ずるものは収益とする。
(当初受益者)
第13条 この信託の元本及び収益の当初の受益者は委託者とする。
(受益権証書)
第14条 委託者は、この信託契約に基づく元本及び収益の受益権を証するため受益権証書を作成し、これを元本及び収益の受益者に交付する。
(受益権の譲渡・承継・質入れ)
第15条 受益権は、受託者の事前の書面による承諾を得た場合に限り、これを譲渡又は質入れすることができるものとする。
2 受益権の譲渡又は承継により受益者が変更になった場合、受益者変更の手続に要する費用は受益者の負担とする。
3 受益権の譲渡又は承継を受けた者は、その受益権の持分割合に応じて、受益者の権利及び義務を承継する。
(金銭の運用方法)
第16条 信託財産に属する金銭は、運用方法を同じくする他の信託財産に属する金銭と合同し、又は単独で、これを貸付け・手形割引・預け金・コールローン・有価証券・他の信託受益権その他受託者が相当と認める方法により運用することができる。この場合、信託受益権には、乙を受託者とするものを含むものとする。
2 前項の運用により取得した信託財産については、受託者が必要と認める場合のほか、信託の登記・登録又は信託財産の表示・記載を省略する。
(敷金及び入居保証金等の運用方法)
第17条 受託者が、信託不動産の賃貸により賃借人から受け入れた敷金及び入居保証金等は受託者の判断により、前条に定める運用方法によるほか、第3条の建築代金の支払に充当し、又は第4条の借入金、他の敷金若しくは入居保証金等の返済に充当することができるものとする。
2 前項に定める処理結果につき、受寄者はこれを受益者に報告する。
(公租公課等諸費用の支払)
第18条 信託財産に関する公租公課及び登記費用(第2条の場合を除く)、設計管理費用請負代金、借入金、敷金及び入居保証金等の返済金及び利息、信託不動産の修繕・保存・改良費用、その他信託事務の処理に必要な諸費用は、受益者の負担とし受託者は信託財産から支弁し、又は支払の都度受益者に請求し、若しくはあらかじめ引当金の預託を受益者に請求できるものとする。受託者が信託事務を処理するために過失なくして受けた損害の補償についても同様とする。
2 受託者が、前条の諸費用に関し立替支払をしたときは、受託者は、当該立替金及びこれに対する年○パーセント(ただし365日日割計算とする)の割合による利息を受益者に請求し、又は信託財産より支弁を受けることができるものとする。
(信託財産の換価による諸費用等の充当)
第19条 信託財産に属する金銭が、借入金の返済及び利息、信託事務処理のため受託者が過失なくして受けた損害、その他信託事務処理のための諸費用並びにそれらの立替金の支払をするのに足りない場合で、受益者からその支払を受けることができないときは受託者は一般に相当と認められる方法・価額をもって、信託財産の一部又は全部を売却し支払に充当することができるものとする。
(信託の計算及び収益の交付)
第20条 信託財産に関する計算期日は、毎年○月、○月の各末日及び信託終了のときとし、受託者は当該計算期間の収支計算書を作成して受益者に報告する。
2 前項の収支計算においては、第12条の収益をもって収入とし、第18条1項の諸費用から、借入金・敷金・入居保証金等の返済金、信託不動産の資本的支出にかかる修繕・保存・改良費用、その他信託不動産にかかる資本的支出を控除したものをもって支出し、収入から支出を差し引いたものを純収益(又は純損失)とする。
3 純損失は、繰越損失として翌計算期に繰り越し、翌期以降の純収益をもって填補する。
4 純利益(前計算期からの繰越損失があるときは、それを填補した後の純利益)は次の各号により処理する。
一 純利益のうち信託財産から支弁した次の金額は、各計算期日の翌日に信託の元本に組み入れる。
イ 「信託不動産及び受託者の定める必要運転資金の合計額」に見合う「借入金敷金及び入居保証金額等の合計額」の当期返済による減少額(ただし、第22条に定める敷金等返済準備金の取崩しによる返済額を除く)
ロ 当期における信託不動産の資本的支出にかかる修繕・保存・改良費用、その他信託不動産にかかる資本的支出の額(ただし、第21条に定める修繕積立金の取崩しによる充当額は除く)及び受託者の定める必要運転資金留保額
ハ 第21条に定める修繕積立金及び第22条に定める敷金等返還準備金への当期積立額
二 純利益より前号による信託元本組み入れ額を控除した残額は、各計算期日の翌営業日以降1か月以内に、領収書と引換えその他受託者の定める方法により、金銭をもって受益者に交付する。
(修繕積立金)
第21条 受託者は、信託不動産の修繕・保存・改良の費用の一部又は全部に充当するため受託者が別に定めるところにより、毎計算期に信託財産から修繕積立金を引き当て、積み立てることができる。
2 前項の修繕積立金は、受託者が信託財産の修繕・保存・改良を必要と認めた場合にはこれを取り崩し、その費用に充当することができる。この場合、受託者は受益者に報告するものとする。
(敷金返還準備金)
第22条 受託者は、敷金・入居保証金等の返還に充てるため受託者が別に定めるところにより毎計算期に信託財産から敷金等返還準備金を引き当て、積み立てることができる。
2 前項の敷金等返還準備金は、本件建物の賃貸借契約に基づく敷金・入居保証金等の返還に当たり、受託者が必要と認めた場合には、これを取り崩しその支払いに充当することができる。この場合、受託者は受益者に報告するものとする。
(信託報酬)
第23条 本件建物竣工時までの信託報酬は、本件建物建築工事請負代金の額に対し、100分○を乗じて得た金額とし、受託者は本件建物竣工時に信託財産の中から受け入れ、又は受益者に請求できるものとする。
2 本件建物竣工後における信託報酬は、第20条第1項に定める各計算期間に受け入れた信託不動産の賃貸料(更新料・権利金等を含む。)に対し100分の○を乗じて得た金額とし、受託者は各計算期日に信託財産の中から受け入れ、又は受益者に請求できるものとする。ただし、一般経済情勢に著しい変動が生じたとき、その他相当の事由が生じたときは、受託者は受益者と協議の上、信託報酬の額を変更することができる。
3 受託者が、信託事務の処理に関し著しく手数を要するときは、受益者と協議の上、別途相当の信託報酬を信託財産の中から受け入れ、又は受益者に請求できるものとする。
(信託期間)
第24条 この信託契約の期間は、本契約締結日より、令和○年○月○日までとする。ただし、受益者から信託期間満了1年前までに申し出がある場合には、委託者及び受託者は協議の上、信託期間を延長することができるものとする。
(信託契約の解除)
第25条 この信託契約は解除することができない。
2 前項の規定にかかわらず、第31条の場合、又は受益者より受託者に対し、天災その他やむを得ない事情により解除の申し出がある場合において、委託者及び受託者が相当を認めた場合には本契約を解除できるものとする。
3 前項の場合、受託者は受益者に対し、解除によって生じた損害金及び解除手数料を請求するものとする。
4 前項の解除手数料は、信託不動産の固定資産税評価額の100分の○とする。
(受託者による信託契約の解除)
第26条 前条の規定にかかわらず、経済情勢の変化その他相当の事由により信託目的の達成又は信託事務の遂行が不可能又は著しく困難になったと受託者が認めたときは、受託者は、委託者及び受益者に対する通知をもって本契約を解除することができるものとする。
2 前項の解除によって生じた損害については、受託者はその責を負わない。
(信託の終了及び元本の交付)
第27条 本契約は、信託期間満了の時、又は第25条第2項若しくは第26条第1項により契約が解除された時に終了する。
2 信託が終了したときは、受託者は最終計算に関し、受益者の承認を得るものとする。この場合、最終計算期前の収支計算は記載を省略することができる。
3 信託の元本は、前項の承認を得た上で、受益者に受益権証書と引換えに、次の方法をもって交付する。
一 信託不動産については、信託の当期の抹消並びに受益者への所有権(持分割合による受益権を有する受益者に対しては、その持分割合による所有権の共有持分)移転の当期を終了し、現状有姿のままこれを受益者に引き渡す。この場合、本件建物につき存在する賃貸借契約で受託者に対抗できるものは、受益者がこれを承継する。
二 信託不動産以外の資産は金銭をもって交付する。ただし、受託者が相当と認めたときは、その全部又は一部を現状有姿のまま交付することができるものとする。
三 敷金及び入居保証金等の返還債務、借入金債務、その他の債務については、次のとおり取り扱うものとする。
イ 敷金及び入居保証金等の返還債務は、賃借人の同意を得て受益者が承継し、受託者はその責を免れるものとする。
ロ 借入金債務その他の債務が残存するときは、債務の期限の如何にかかわらずその債務の弁済に充当するための資金として、受託者は信託財産に属する金銭よりその資金を支弁して留保し、さらに不足のあるときは受益者がその資金を受託者に預託するものとする。ただし、債権者の同意を得て、受益者が借入金債務その他の債務を承継し、受託者の責を免れしめることを妨げないものとする。
4 受託者は、やむを得ない事情により前項各号により信託の元本を交付することができないと認めたときは、一般に相当と認められる方法・価額をもって信託財産の一部又は全部を売却し、その売却代金をもって前項第3号の債務を清算し、又は、その弁済に充当するための資金を支弁して留保し、その残額を受益者に交付する。
5 信託元本交付日は、信託終了日の翌営業日とする。ただし、前2項による清算が終了しないときは、清算終了日の翌営業日とする。
6 信託終了に関する費用及び固定資産税・都市計画税その他信託財産に関し信託終了後に支払いを要する費用は、宛名名義の如何にかかわらず、全て受益者の負担とし、受託者は費用相当額(見込額を含む)を受益者に請求し、又は信託財産から支弁の上、これを留保し支払いに充当するものとする。この場合には、第18条2項及び第19条を準用する。
(端数処理)
第28条 第20条に定める収支計算及びぢ第27条第3項第2号本文に定める信託終了時の交付元本の計算の際に1円未満の端数が生ずる場合は、その端数金額を切り捨てるものとする。
(印鑑の届出)
第29条 委託者及び受益者は、それぞれ印鑑をあらかじめ受託者に届け出なければならない。
2 受託者が、領収証その他の書類に押印された印影を前項の届出印鑑と照合し、相違ないと認めて元本又は収益の交付、その他の処理をしたときは、印章の盗用、偽造、その他の事情の如何にかかわらず、そのために生じた損害については、受託者はその責を負わない。
(届出事項)
第30条 委託者・受益者又はこれらの相続人は、次の各号の場合には遅滞なくその事実を書面によって受託者に提出の上、所定の手続をとらなければならない。
一 信託契約書、受益権証書、若しくは届出印章を喪失したとき
二 委託者・受益者若しくはその代表者・代理人の住所・氏名・組織・行為能力に変更が生じたとき
三 その他信託契約に関し、重要と認められる事項が生じたとき
2 前項の届出が遅れたことにより生じた損害については、受託者はその責を負わない。
3 第1項の届出を怠ったため、受託者からなされた通知等が延着し、又は到達しなかった場合には、通常到達すべきときに到達したものとされても、委託者・受益者及びこれらの相続人は異議を述べない。
第31条(反社会的勢力の排除)
1 甲は、自己又は自己の代理人若しくは媒介をする者が、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
一 暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること
二 暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
三 自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に暴力団員等を利用していると認められる関係を有すること
四 暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
五 役員または経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること
書式内で注意すべきポイント
注1 信託とは、「特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な甲をすべきものとすることをいう。」(信託法2条1項)
信託は、①信託契約、②遺言、③公正証書のいずれの方法によりすることができる。
注2 本契約書は、信託銀行が土地所有者のためにその土地につき貸しビル等を建設し、右貸しビル等の賃料等の収益のうち費用や信託報酬等を控除した残余を信託配当として受益者に交付する土地信託を想定したものである。
注3 信託銀行が、受託した土地の上に建物を建築すること(第3条)、その建築に必要な資金を信託財産及び受益者の負担で借り入れ、必要であれば受託土地及び建物の上に抵当権を設定し得ること(第4条)、完成した建物は信託銀行において維持・管理し、これを他に賃貸して収益を挙げるものであること(第8条)、事業より生ずる収益は元本とともに当初委託者に受益者として帰属すること(第12条・第13条)、信託の計算関係は毎年一定の期日においてなされ信託銀行から受益者に報告されること(第20条)、その他信託報酬(第23条)、信託期間(第24条)、信託の終了及び信託終了時の元本の受益者への交付(第27条)等が本契約の主要な内容であり、賃貸事業を目的とする土地信託の典型的な契約書ということができる。
注4 信託においては、一定の目的が定められなければならない(信託法2条1項)。信託法でいう目的とは、受託者の行動基準、すなわち投資方法や受益者への交付方法のことである。
注5 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産にぞくすることを第三者に対抗することができないとされている(信託法14条)。不動産は登記をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産に該当するので、登記が必要である。
注6 受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならないとされており(信託法29条2項)、第9条もこのことを確認している。なお、善管注意義務とは、その従事する職業や社会的な地位に応じて通常要求される程度の注意義務をいう。
注7 第10条では、訴訟手続を第三者である弁護士に委託する旨定めているが、信託行為のその旨の定めがあるときはもちろん信託行為にその旨の定めがない場合でも、第三者に委託することが信託の目的に照らして相当である等の場合には可能である(信託法28条)。
注8 元本と収益のとの区別は必ずしも明確でないから、信託契約において区別基準を明確にしておく。元本受益者と収益権者とが異なる場合には紛争の種になるため、より注意をする。
注9 受益権は、基本的には、民法上の指名債権のように扱われ、原則として譲渡可能であるが、第15条のように特約により譲渡を制限することもできる(信託法93条)。
注10 信託財産に属する金銭としては、賃貸料、権利金、敷金等がある。賃料、権利金等は一般にすぐに受益者に引き渡す性質のものであるから、その運用についてそれほど問題にしなくてもよいが、敷金のように比較的長期に渡るものは、その運用利回りについても考える必要がある。
注11 受託者が信託事務処理にあたり必要な費用を支出した場合、信託行為に定めがなくても、信託財産から当該費用の償還又は前払いを受けることができる(信託法48条1項、2項)。また、受託者は受益者との間で合意をすれば受益者から当該費用の償還又は前払いを受けることができる(信託法48条5項)。
注12 受託者は、受益者との間で合意をすれば、受益者から信託報酬を受け取ることができる(信託法48条5項)。
注13 受託会社としては、信託期間を50年などと長期にすることは、その間の経済事情その他諸般の情勢変化を考えると、管理上好ましいことではない。そのため、20年程度にしておき、第24条による延長を利用した方がよい。
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