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契約社員に試用期間を設けることはできるか?

会社が正社員を採用する場合、就業規則の規定に従い、入社後3~6か月程度の試用期間を設けることが一般的です。

これに対し、契約社員のような有期契約労働者に試用期間を設定しているケースはあまり見られません。

有期契約労働者に試用期間を設定するケースが少ないのはなぜなのでしょうか。そもそも試用期間を設定することはできるのでしょうか。

試用期間の法的な性格等も確認しながら、契約社員に試用期間を設けることの妥当性について検討していきたいと思います。

【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘

試用期間とは

試用期間とは、その名のとおり「お試し期間」であり、就業規則や雇用契約書にその期間が定められています。定められた期間中に会社が対象労働者の能力や経験、勤務態度等を見極め、適格性を欠いていると判断した場合は本採用を見送ったり(=解雇に該当)、判断を先送りするため試用期間の延長を行ったりします。

試用期間の法的性格は、過去の判例(三菱樹脂事件 最大判 S48.12.12)から「解約権留保付労働契約」といわれ、採用から試用期間中における労働者の適性評価の結果によっては労働契約を解約する権利が会社に留保されているというものです。

試用期間中の解雇は、通常の解雇と比べて解雇の自由が広く認められているということもあり、あらゆる会社が試用期間を設けていることと思われます。

ただし、労働基準法には試用期間の定義や長さ等について規定はなく、試用期間を設けるかどうかは会社の自由です。試用期間の長さも自由に決めることができますが、1年を超えるような場合は公序良俗に反し、無効とされる可能性があります。

※労働基準法第21条に「試みの使用期間中の者」という規定がありますが、これは入社から14日以内であれば解雇予告をすることなく即時解雇できるというものであって、「試用期間」とは異なる内容となるため注意が必要です。

したがって、契約社員に試用期間を設けることは法的に問題ありません。

契約社員に試用期間を設けることは適切ではない

契約社員に試用期間を設けることについて法的な問題がないことを確認しましたが、以下の理由により、実務上、試用期間を設けることは適切な対応とは言えないため、避けるべきと考えます。

試用期間満了による契約終了の可否は厳格に判断される

労働契約法第17条には、契約期間中の解雇等について次のような規定があります。
「使用者は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」

ここでいう「やむを得ない事由」とは、「当該契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由」です。その範囲は極めて狭く解釈されているため、試用期間満了をもって契約を満了させる行為は解雇に該当するだけにとどまらず、その有効性も厳格に判断される可能性があります。

労働契約法第17条の「やむを得ない事由」は、期間の定めのない労働契約(いわゆる正社員として雇用する場合)において解雇を考える際に確認すべき労働契約法第16条(下記参照)の要件よりも、厳格なものとされています。

労働契約法第16条(解雇)
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」

上記から、労働者に以下のような行為が認められれば、契約期間中の解雇も認められる余地はあると思われます。
① 暴言を繰り返し、注意・指導をしても改めなかったため、業務の正常な運用が妨げられるような状況になっていた。
② 遅刻や無断欠勤を繰り返し、注意・指導をしても改めなかった。
③ 私傷病により労務不能となった。
④ 即戦力として期待され、地位や賃金について相応の用意をしたものの、期待した能力には遠く及ばないことが結果からも明らかである。

人材採用に苦労する

ただでさえ雇用が不安定な契約社員の採用では、募集に対する応募の数は極めて少なく、多くの会社が苦労しているところです。そのような状況なのに、試用期間まであるような会社に人材など集まるはずもありません。

人材獲得競争が激しさを増している近年の状況からみても、採用力を自ら下げるような対応は避けるべきでしょう。

それよりは、契約社員の能力や行動を適正に評価し、成績不振なら教育指導の機会を与え、企業秩序に反するような行為があった場合には注意したり、場合によっては懲戒処分とするなど、会社として訴訟リスク等に備えた対応を取る方がよほど合理的です。

(注意や指導を行った場合、日時やいつ誰が、どのような注意・指導を行ったのか、必ず記録に残しておきましょう)

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