ある中小企業で働いていました。
その会社は給与の未払いが数か月続いていたものの、仕事が好きだったこともあり頑張っていました。
ところがある時、社員に何の説明もなく会社は倒産してしまいました。
未払の給与は支払ってもらえないのでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
2018年の年明け早々、成人式の日に予約していた晴れ着が着られなくなり、式に出席することができなかったり、預けていた晴れ着そのものが返却されないなど多くの被害者が出た事件がありました。
その会社は加害者である一方、そこで働いていた社員には賃金を支払われておらず、被害者でもあるという状況です。
労働基準監督署から5回もの是正勧告を受けていたにもかかわらず、改善されることなく倒産したのです。
実際、突然倒産するような会社に賃金支払能力があるかといえば、「ない」というのが正直なところでしょう。
そうすると、社員の方は泣き寝入りするしかないのかと思われます。
しかし、あきらめる必要はありません。
条件付きですが、「未払賃金立替払制度」を利用できるかもしれないからです。
この制度は、事業主(会社)の代わりに労働者健康福祉機構が未払賃金の一部を労働者に支払ってくれる仕組みです。
未払賃金立替払制度の利用の条件
未払賃金立替払制度の利用の条件は次の通りです。
1.企業が倒産していること。
※倒産は破産等の法律上の倒産だけでなく、事実上の倒産も含まれます。
2.企業が1年以上、労災保険の適用事業場であること。
3.労働者が、倒産について裁判所への申し立てが行なわれた日(破産等の場合)、または労働基準監督署への認定申請が行なわれた日(事実上の倒産の場合)の6か月前の日から2年の間に退職した者であること。
未払賃金立替払いの上限金額
未払賃金立替払いの上限については、「未払賃金の総額の100分の80」と決められています。
ただし、退職した日における労働者の年齢により上限額が設けられています。
例えば、退職日時点の年齢が30歳未満の方の場合、未払賃金の限度額は110万円とされているので、立替払される金額の上限は88万円となります。
ちなみに、未払賃金には退職手当は含まれますが、賞与等の臨時に支払われる賃金は含まれません。
また、未払賃金の総額が2万円未満の場合は請求することができません。
未払賃金立替払いの請求方法
未払賃金立替払いの請求方法は、