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税務調査における債権の時効の取り扱いとは?



税務調査では、時効をむかえた債権はどのように取り扱われるのでしょうか?


【この記事の監修者】税理士法人桜頼パートナーズ会計 小髙事務所 小髙 正之

民間人以上に債権の時効にこだわる行政機関

税務調査官の「債権の時効」の取り扱いについて理解するために、まずは「労働債権」について考えてみます。

ところで、「労働債権」と「調査」という2つのキーワードから導き出されるものというと何を想像するでしょうか?

正解は、「未払い残業代」に対する労働基準監督署の立ち入り調査です。

労働債権の時効は2年です。
つまり、未払い残業代は過去2年間まで遡って調査されます。

言い換えれば、時効をむかえた債権には会社に対して支払命令を出すことができません。
それが行政機関の立場であり、税務署もまったく同じです。

では、労働基準監督署の調査と同様に、税務署は時効をむかえた債権について、その時点であきらめなければならないのでしょうか?

結論からいえば、あきらめなくてもいい、ということになります。
なぜなら、「民法」では時効が過ぎたものに対して、相手が支払わない意思表示をして、初めて債権が消滅するからです。

国税は租税回避行為を絶対に許さない

ある会社の税務調査で、未納の源泉所得税が争点になりました。

源泉所得税などの国税債権の時効は、「国税通則法」第72条で5年と定められています。

このケースでは5年間、税務署は督促などをしていませんでした。
つまり、時効を中断させなかったため、未納の源泉所得税の支払いは免除されます。
よって、その金額は「債務免除益」となり、所得金額が増えることを調査官から指摘されて、この会社は修正申告に応じました。

さて、この会社は未納の源泉所得税を支払わないという意思表示はしていないのに、なぜ債務免除益が成立したのでしょうか?
じつは、そこに税法の根本的な考え方が見えてきます。

時効をむかえた債権について、民法で規定する意思表示によって、支払側が債務免除益の計上時期を自由にコントロールできる状態では、課税の公平に反するので問題です。
通常は時効をむかえたら、支払わない意思表示をするのが経済取引の常識です。

このように、

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