税務調査で、時効をむかえた買掛金が問題になった会社の事例があれば教えてください。
【この記事の監修者】税理士法人桜頼パートナーズ会計 小髙事務所 小髙 正之
前回は、税務調査における時効を向かえた債権の取り扱いにおいて、会社の「租税回避」は許されないことなどについて解説しました。
詳しい解説はこちら⇒
「税務調査における債権の時効の取り扱いとは?」
今回は、税務調査で会社の買掛金の時効が問題となった事例を紹介します。
源泉所得税などの国税債権の場合、「国税通則法」第72条では、その時効は5年と定められています。
税務署が会社に督促などをして時効を中断させなかった場合、未納の源泉所得税の支払いは免除されますが、その金額は「債務免除益」となり、所得金額が増えるため会社は修正申告をしなければいけません。
それは、「国税通則法」第73条に、納税者が支払わない意思表示をしなくても債務免除益が成立する、と明記されているからです。
つまり、時効をむかえた債権を債務免除益に計上するかどうかの基準は、「支払わない意思表示の有無」という民法に従うのではなく、会社に「支払う意思があるかどうか」で判断されるわけです。
以前、税務調査で会社の買掛金を支払う意思の有無が争点になった事例がありました。
国税債権については、時効をむかえた場合、支払う意思がない会社もありますが、「売掛債権」の場合は、相手が行政機関ではなく民間企業ですから話が変わってきます。
調査官「この買掛金は時効ですね」
税理士「時効で債務が消滅するのは意思表示をしてからですよね」
仮に、この誘導尋問で、調査官が会社から買掛金を支払う意思がないことの証言を得たならば、会社は債務免除益を計上しなければなりません。
しかし、証言を得られなかった場合、調査官は次のように言います。
「本当に支払う意思がないかどうか、債務先に照会して調べるかもしれません」
これを「反面調査」といい、会社に対する牽制に他なりません。
今後、提出される決算書で債務先と金額に変化がなければ、支払う意思がないと認定される可能性があります。
反面調査をちらつかせる調査官に対して、逆に会社は次のように牽制しました。
「信用問題になるので、債務先に照会する時は事前に連絡を下さい。実際に口座へ振り込むことで、支払う意思を表示しますから」