税理士の名義貸しとなる行為について、その範囲や違法となる場合に適用される法律、罰則などについて教えてください。
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【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
税理士の名義貸しは違法行為なのですが、実際には名義貸しをしている税理士が存在しているようです。
そこで今回は、どのような場合に名義貸しになるのか、違反となった場合の罰則などについて「税理士法」から説明したいと思います。
目次
税理士の名義貸しとは?
税理士の名義貸しとは、次の者が税理士法で定められている独占業務を行なうために税理士が名義を貸すことです。
・業務停止処分中の税理士(税理士法第37条:信用失墜行為)
・税理士会に入会していない者=非税理士=無資格者(税理士法第37条の2:名義貸し)
税理士の独占業務とは?
税理士の独占業務とは次のものをいいます。
・税務代理:税務調査の立会いなどで税務当局に対する陳述・主張の代行
・税務書類の作成:申告書等の作成の代行
・税務相談:課税標準等の計算について、納税者の相談に応じること
名義貸しに対して適用される罰則
「業務停止処分中の税理士に対する場合」
2年以内(1ヵ月単位で定める)の税理士業務停止又は税理士業務禁止の懲戒処分
「非税理士に対する場合」
・2年以内の税理士業務停止又は税理士業務禁止の懲戒処分(非税理士に対して名義貸しを行なった税理士に科される処分)
・2年以下の懲役又は100万円以下の罰金の刑事罰(非税理士に対して科される罰則)
懲戒処分の内容
処分の重い順から次の3段階に分類されます。
税理士業務禁止
処分を受けた日から3年を経過する日まで税理士の資格喪失・登録抹消をして、税理士会から退会しなければなりません。
また、関与先との顧問契約は解除しなければなりません。
2年以内の税理士業務停止
税理士登録は抹消されず、税理士会会員身分は保証されます。
ただし、税理士証票を返還する必要があります。
また、関与先との顧問契約は解除しなければなりません。
戒告
本人の将来を戒める旨の申渡しをする処分です。
税理士業務あるいは税理士の資格について特に制約を受けないので、引き続き税理士業務を行なうことができます。
名義貸しの懲戒処分の量定に対する考え方
税理士法第37条(信用失墜行為)と第37条の2(名義貸し)に共通して、「貸人数」、「作成件数」、「期間」、「対価」の4つの要素で決まります。
このような「不正行為の類型ごとの量定の考え方」を基本にしつつ、以下の点を総合的に勘案し決定します。
・不正行為の性質、態様、効果等
・税理士の不正行為の前後の態度
・懲戒処分等の前歴
・選択する懲戒処分等が他の税理士及び社会に与える影響
・その他個別事情
名義貸しの範囲と適用される法律
①次の者から依頼を受けて、申告書等に署名押印だけ又は印鑑を預けて署名押印を認めていた場合
・税理士業務処分中の税理士:信用失墜行為違反
・非税理士:名義貸し違反
②会計事務所が非税理士から依頼を受けて、所長税理士の指示により所属している社員税理士が署名押印だけをした場合
・所長税理士:信用失墜行為違反(社員税理士に指示したため)
・署名押印をした社員税理士:名義貸し違反
③非税理士が下書きしたのをもとに税理士がパソコンへ入力して申告書を作成して署名押印した場合
・申告書を作成した税理士:名義貸し違反(課税標準等の計算を自ら判断して計算していないため)
④非税理士が作成した申告書を税理士が転記ミスのチェックだけして署名押印をした場合
・チェックした税理士:名義貸し違反(転記ミスのチェックだけでは、自ら判断して計算したとはいえないため)
たとえば、