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【令和4年度税制改正】住宅ローン控除の要件・控除額の変更点を解説

住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)は、個人が住宅ローンを組んでマイホームを新築・取得・増改築等し、その住宅に居住した際、住宅ローンの年末残高の金額に応じて所得税が減額される制度です。

ただ住宅ローン控除は令和4年度税制改正により、適用要件および控除額が変更され、従来のように制度を利用することが難しくなるケースもありますので、変更内容をご確認ください。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

住宅ローン控除の税制改正が行われた背景

住宅ローン控除は、令和3年12月31日までの期限付きの特例制度でしたが、令和4年度税制改正により、適用期間が令和7年12月31日まで延長されました。

しかし適用期間を延長する際、次の2点の理由から住宅ローン控除制度の見直しが行われました。

2050年カーボンニュートラルに向けた対応

日本では、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けてさまざまな取り組みが行われており、住宅・建築物の分野では段階的に目指すべき姿が示されました。

国は以下の目的を達成するために、令和4年度税制改正で新築を購入する際の支援措置である住宅ローン控除について、省エネ基準への適合を要件とするなどの改正を行いました。

<住宅・建築物の分野の2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対応>
〇2030年に目指すべき姿
● 新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されること
● 新築される戸建住宅の6割においては、太陽光発電設備が導入されること

〇2050年に目指すべき姿
● ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されること
● 合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入の一般化

会計検査院の指摘および当面の経済状況への対応

現在の日本は低金利であり、住宅ローンの借入金利が住宅ローン控除の控除率である1%を下回る逆転現象が発生しています。

この逆転現象は、住宅ローンを組む必要がないのに住宅ローンを組む動機付けや、住宅ローン控除の適用期間が終了まで繰り上げ返済をしない動機付けになることが、会計検査院から指摘されていました。

そのため令和4年度税制改正では、会計検査院の指摘を踏まえ、従来よりも控除率を引き下げると同時に、当面の対応として新築住宅等については控除期間を延長する措置が施されました。

令和4年度税制改正による住宅ローン控除の変更点

令和4年度税制改正により、住宅ローン控除を適用する年分などによって節税効果が変わってきます。

<令和4年以降の住宅ローン控除の概要>
●居住年分:令和4年・令和5年
控除率:0.7%

〜建物の種類:控除期間〜
新築・買取再販(認定住宅等)
:13年

新築・買取再販(その他)
:13年

中古
:10年

〜建物の種類:借入限度額〜
新築・買取再販(認定住宅)
:5,000万円

新築・買取再販(ZEH水準省エネ住宅)
:4,500万円

新築・買取再販(省エネ基準適合住宅)
:4,000万円

新築・買取再販(その他)
:3,000万円

中古(認定住宅)
:3,000万円

中古(ZEH水準省エネ住宅)
:3,000万円

中古(省エネ基準適合住宅)
:3,000万円

中古(その他)
:2,000万円

●居住年分:令和6年・令和7年
控除率:0.7%

〜建物の種類:控除期間〜
新築・買取再販(認定住宅等)
:13年

新築・買取再販(その他):-
(※令和5年までに新築の建築確認を受けた住宅については、
借入限度額2,000万円、控除期間10年で適用できます。)

中古
:10年

〜建物の種類:借入限度額〜
新築・買取再販(認定住宅)
:4,500万円

新築・買取再販(ZEH水準省エネ住宅)
:3,000万円

新築・買取再販(省エネ基準適合住宅)
:3,000万円

新築・買取再販(その他):-
(※令和5年までに新築の建築確認を受けた住宅については、
借入限度額2,000万円、控除期間10年で適用できます。)

中古(認定住宅)
:3,000万円

中古(ZEH水準省エネ住宅)
:3,000万円

中古(省エネ基準適合住宅)
:3,000万円

中古(その他)
:2,000万円

●居住年分:令和3年(参考)
控除率:1%

〜建物の種類:控除期間〜
新築・買取再販(認定住宅等)
:10年

新築・買取再販(その他)
:10年

中古
:10年

〜建物の種類:借入限度額〜
新築・買取再販(認定住宅)
:5,000万円

新築・買取再販(ZEH水準省エネ住宅):-
新築・買取再販(省エネ基準適合住宅):-

新築・買取再販(その他)
:4,000万円

中古(認定住宅): –
中古(ZEH水準省エネ住宅): –
中古(省エネ基準適合住宅): –

中古(その他)
:2,000万円

住宅ローン控除の対象となる建物の細分化

従来の住宅ローン控除では、新築・中古で借入金額の上限などが違いましたが、令和4年以降は新たな枠組みとして、買取再販住宅が設けられました。

「買取再販住宅」とは、既存住宅を宅地建物取引業者が一定のリフォームにより良質化した上で販売する住宅のことをいいます。

また建物の種類については、建物の種類が「認定住宅」・「ZEH水準省エネ住宅」・「省エネ基準適合住宅」・「その他」の4種類に区分されるようになり、該当する種類によって借入限度額の上限が異なります。

税額控除の控除率の引き下げ

住宅ローン控除に関する税制改正で特に影響が大きいのが、控除率の引き下げです。

令和3年までの住宅ローン控除の控除率は1%でしたので、住宅ローンの年末残高2,000万円の方については、20万円を税額控除として差し引くことができました。

しかし令和4年以降は控除率が0.7%に引き下げられたため、同じ年末残高であっても控除額は14万円と、節税効果が3割も減少します。

借入金額の上限引き下げ

住宅ローンの控除率引き下げと同様に影響を及ぼす変更点なのが、借入金額の上限引き下げです。

令和3年に新築(その他)の住宅を購入して居住した場合、借入金額の上限は4,000万円でしたが、令和4年・5年に適用する場合は3,000万円、令和6年・7年は2,000万円です。

4,000万円の住宅ローンを組んで購入した場合、令和3年でしたら4,000万円に控除率1%を乗じた40万円が控除額となりましたが、令和4年に同一の条件で住宅を購入した際、控除額は21万円(3,000万円×0.7%)となります。

住宅ローン控除を適用できる期間の拡大

住宅ローン控除の控除率および借入金額の上限が引き下がった代わりとして、控除期間が延長されます。

令和3年までの住宅ローン控除は、適用期間は原則10年でしたが、令和4年以降は13年と3年延びます。

ただし、住宅を令和6年または7年に取得した建物が、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅に該当しない場合と既存住宅についての適用期間は従来と同じ10年です。

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