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借地権の返還に伴う個人・法人の立場における課税関係の違い

借地権者が借地権を返還した際、立退料の有無や支払額によって課税関係の取扱いが異なります。

本記事では、借地権の返還に伴う課税関係を借地人と地主、個人と法人の立場別に解説します。

借地権返還時の法人借地権者に対する課税関係

借地権を返還する際の法人借地権者に対する課税関係は、立退料の有無で変わります

立退料を受領した場合

法人借地権者が借地権の返還に際し、借地権の対価に見合う適正な立退料を受領した場合、立退料は受領した日の属する事業年度の益金の額に算入します。

しかし、借地権の帳簿価額については損金の額に算入することから、実際に課税対象となるのはその差額です。

立退料を受領しなかった場合

通常であれば借地権の対価に見合う適正な立退料を受領するケースにおいて、借地権の返還が無償等で行われた場合、借地権の設定時における権利金の認定課税と同様な課税が行われます。

権利金の認定課税は、権利金を収受する慣行があるにもかかわらず権利金を収受しない場合、権利金の受け渡しが行われたものとみなし課税するものです。

なお、税務署に対して「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合には、認定課税は行われません。

借地権返還時の個人借地権者に対する課税関係

個人借地権者が借地権を返還する場合、立退料の有無だけでなく、受領する額によっても課税上の扱いが変わります。

立退料を受領した場合

個人借地権者が借地権の返還に伴い、地主から借地権の対価に見合う適正な立退料を受領した場合、立退料で借地権を譲渡したとして、譲渡所得の課税対象となります。

立退料(譲渡収入金額)から、借地権の取得費および譲渡費用などを差し引いた残額がある場合には譲渡所得税が課されます。

なお、借地権の返還に係る譲渡所得の短期・長期の判定は、借地権の設定した時が基準です。

立退料を受領しなかった場合

通常であれば借地権の対価に見合う適正な立退料を受領するケースにおいて、個人借地権が借地権を無償返還等した場合、法人借地権者とは違い認定課税の問題は生じませんが、贈与税の課税関係は発生します。

法人地主に対して無償返還を行った際は、相当な理由が無い限り地主に対して贈与による資産の移転があったとして、みなし譲渡の対象になります。

また立退料が低額の場合には、通常の借地権の対価の2分の1以上であれば課税上の問題は生じませんが、2分の1未満であればみなし譲渡の対象となるので注意してください。

借地権返還時の法人地主に対する課税関係

借地権の返還が行われた際は、地主に対しても課税関係が生じることがあります。

借地権の無償返還を受けた場合

法人地主が借地権の返還を受ける際に、立退料の支払いが行われなかったとしても、原則経済的利益はないものとして扱われます。

一方で、借地権の返還により土地が更地と同様な状態になったとしても、借地権を時価で受け入れることはせず、土地の価値は借地権決定時に損金に算入した土地の帳簿価額の一部を、借地権の返還時の土地の帳簿価額に加算します。

立退料を支払い借地権の返還を受けた場合

法人地主が借地権の返還に伴い立退料を支払った場合、借地権設定時において土地の帳簿価額の一部を損金に算入しているかで取扱いが異なります。

借地権設定時に損金算入していた場合、実際に支払った立退料の額と、借地権設定時に損金に算入した土地の帳簿価額のいずれか高い金額を土地の帳簿価額に加算します。

ただし、借地権設定時の損金算入額が支払った立退料等の額を超えているときは、超えた部分は差益として扱われます。

借地権設定時に損金算入がなかった場合、立退料の額は借地権の消滅の対価として土地の帳簿価額に計上することになることから、立退料の額を損金算入することは認められません。

借地権返還時の個人地主に対する課税関係

個人地主も法人地主と同様、借地権の返還を受ける際に立退料を支払ったか否かで課税関係が異なります。

借地権の無償返還を受けた場合

個人地主の場合、借地人が法人と個人のどちらに該当するかで課税上の取扱いが変わります。

法人借地権者が無償または適正な対価より低い立退料で借地権を返還した際は、相当の理由がある場合を除き、個人地主は一時所得や給与所得等の課税対象となります。

個人借地権者が借地権を無償で返還したときは、借地権の贈与が行われたものとして、地主に対して贈与税の課税関係が生じます。

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