役員報酬は原則損金不算入ですが、業績連動給与に該当する場合には損金算入が認められます。
本記事では、業績連動給与を損金算入するための要件および、注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
業績連動給与の概要
業績連動給与は、利益や株価の指標を基に算出した額を金銭または株式等で給与を支給する方法をいいます。
役員報酬を法人税の損金として算入できるのは、「定期同額給与」・「事前確定届出給与」・「業績連動給与」のいずれかに該当する場合です。
定期同額給与や事前確定届出給与は、支給額の変動や届出した額と異なる金額を支払ってしまうと、損金算入が認められません。
それに対し、業績連動給与は利益等と連動して支払う報酬ですので、会社の業績に応じた金額を支給することができます。
業績連動給与の損金算入要件
業務執行役員に対して支給する業績連動給与のうち、次の要件をすべて満たすものが損金として算入することができます。
損金算入の対象となる業績連動給与の範囲
損金算入が認められる業績連動給与は、次のいずれかに該当する給与をいいます。
ただし、利益等に連動して支払われる報酬であったとしても、不当に高額と認められる部分の金額は損金不算入となります。
<業績連動給与に該当する給与>
・利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標、その法人または、その法人との間に支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される額、または数の金銭・株式・新株予約権のいずれかによる給与
・特定譲渡制限付株式等による給与のうち、無償で取得される株式の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの
・特定新株予約権等による給与のうち、無償で取得され、または消滅する新株予約権の数が役務の提供期間以外の事由により変動するもの
算定方法要件
業績連動給与として交付される金銭の額等は、給与に係る職務執行期間開始日以後に終了する事業年度の利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標または、売上高の状況を示す指標を基礎とした客観的なもので、次の要件を満たしている方法で算定する必要があります。
・確定額または確定数を限度としているもので、他の業務執行役員に対して支給する業績連動給与に係る算定方法と同様であること
・事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに、報酬委員会等が算定方法を決定するなど、一定の適正な手続きを経ていること
・適正な手続きの終了日以後、遅滞なく有価証券報告書に記載するなど、一定の方法により開示されていること
支給時期要件
業績連動給与は、次に掲げる区分ごとに定める時期までに交付していないと、損金算入が認められません。
<業績連動給与の交付時期>
交付時期
金銭の額の算定の基礎とした利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標または、売上高の状況を示す指標の数値が確定した日の翌日から1か月を経過する日
交付時期
業績連動指標の数値が確定した日の翌日から2か月を経過する日
交付時期
適正な手続きの終了日の翌日から1か月を経過する日
損金経理要件
業績連動給与を損金算入するためには、損金経理をしていることも要件です。
(給与の見込額として損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法で経理していることを含みます。)
業績連動給与を損金として計上する際のポイント
業績連動給与を損金算入する際の要件は、支給する役員や報酬の算定方法だけでなく、開示方法についても定めがあります。
業務執行役員の範囲
業績連動給与を損金算入する際に対象となる業務執行役員は、法人の業務を執行する役員をいいます。
法人役員であったとしても、取締役会設置会社における代表取締役以外の取締役のうち、業務を執行する取締役として選定されていない者や社外取締役、監査役および会計参与は業務執行役員には含まれません。
確定した額等を限度としている算定方法の意義
業績連動給与の算定する際の確定した額等の限度は、支給する金銭の額や株式の数の上限が具体的に定められている必要があります。
「経常利益の〇〇%に相当する金額を限度として支給する」のような定め方は、具体的に定められた方法には当たりません。