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個人の事業用資産の買換え特例の要件と適用後の注意点

個人が事業の用に供していた不動産を売却した場合、事業用資産の買換え特例を適用することで譲渡所得税の負担を抑制できます。

ただ特例の要件は譲渡資産だけでなく、取得時期や取得面積等など、買換資産に対するものもある点には注意してください。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

事業用資産の買換え特例(措法37条)の概要

「特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法第37条)」は、譲渡益の一部を繰り越すことができる制度です。

個人が事業用として利用していた不動産を譲渡し、一定期間内に不動産を取得し、1年以内にその不動産(買換資産)を事業用資産として供した際に適用することができます。

譲渡資産と買換資産にそれぞれ要件があり、特例を適用したとしても譲渡益の一部に対しては課税が生じます。

特例を適用するために一時的に事業用として供した資産や、棚卸資産および雑所得の基因となる資産は適用対象外であり、事業用資産の買換え特例を適用した資産に対して、他の特例を重ねて適用することはできません。

事業用資産の買換え特例の適用要件

事業用資産の買換え特例は、次の要件をすべて満たしている場合に限り適用が認められます。

譲渡資産と買換資産の組み合わせ

事業用資産の買換え特例を適用する場合、特例対象となる資産の組み合わせは決まっています。

一般的な譲渡資産と買換資産の組み合わせのケースは、以下の通りです。

<譲渡資産と買換資産の組み合わせの一例>
譲渡資産
譲渡日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超える、国内にある土地等または建物・構築物

買換資産
国内にある事務所、事業所その他の政令で定める施設の敷地や駐車場として供される土地等または、建物・構築物

土地等の譲渡については、原則として譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていることが前提ですが、令和8年3月31日までにした土地等の譲渡については、この要件は停止となります。

一方で、上記の譲渡資産と買換資産の組み合わせのように、譲渡した年の1月1日において、所有期間が10年を超えていることが要件となる組み合わせも存在します。

買換資産の土地面積の制限

買換資産が土地等である場合、取得する面積の制限があります。

面積は原則譲渡した土地等の5倍以内でなければならず、5倍を超える土地等を買換資産として取得した場合、超過部分は特例の対象外となります。

買換資産の取得時期

買換資産は、譲渡資産を売却した年・前年・翌年のいずれかの時期に取得しなければなりません。

前年中に買換資産を取得する際は、取得した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」(通称:先行取得の届出)を税務署へ提出してください。

なお、令和6年4月1日以後に譲渡し、同日以後に買換資産を取得する場合は買換資産の取得日または、譲渡資産の譲渡日のいずれか早い日の属する3月期間の末日の翌日以後2月以内に所定の事項を記載した届出書を提出することが要件に追加されました。

「3月期間」とは、その1年を3月ごとに区分した各期間をいい、たとえば8月に買換資産を取得したときは、11月末までに届出書を提出しなければなりません。

買換資産は1年以内に事業用に供さなければならない

事業用資産の買換え特例の適用対象とする買換資産を取得した場合、取得してから1年以内に事業として供さなければなりません。

買換資産を事業用として供することができなかったときは、特例の適用対象外となるため、適用できない事情に該当することとなった日から4か月以内に、修正申告を行う必要があります。

事業用資産の買換え特例を適用した際の計算方法

事業用資産の買換え特例を適用した場合、基本的には次の計算式で算出された額に基づき譲渡所得を求めます。

<事業用資産の買換え特例を適用した場合の計算式>
収入金額
●譲渡資産の譲渡価額≦買換資産の取得価額の場合
譲渡資産の譲渡価額×0.2

●譲渡資産の譲渡価額>買換資産の取得の場合
譲渡資産の譲渡価額-買換資産の取得価額×0.8

必要経費
●譲渡資産の譲渡価額≦買換資産の取得価額の場合
(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×0.2

●譲渡資産の譲渡価額>買換資産の取得の場合
(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷譲渡資産の譲渡価額)

※課税割合が20%の場合

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